2011年9月25日日曜日

給食の放射性物質検査に補助 NHKニュース


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給食の放射性物質検査に補助 NHKニュース
---全文転載
給食の放射性物質検査に補助
9月25日 4時24分 

東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、学校給食に不安を抱く保護者がいることから、文部科学省は、給食の食材の放射性物質を検査する機器を都道府県が購入する場合、経費の半額程度を補助することになりました。

東京電力福島第一原子力発電所から出た放射性セシウムに汚染された疑いのある食材が給食に使われたため、給食に不安を抱く保護者が増えています。このため文部科学省は、保護者と子どもの不安を解消しようと、給食の食材に含まれる放射性物質を検査する機器を都道府県が購入する場合、費用の半額程度を補助することになりました。文部科学省は、この補助で東北や関東を中心に70台ほど機器を配備できるのではないかとしています。文部科学省は、今流通している食材は安全としたうえで、「それぞれの地域でさらに検査を行う取り組みを支援して、給食に対する不安を解消したい」と話しています。

2011年9月11日日曜日


「チェルノブイリと福島・ベラルーシから学ぶこと」

ここからは石川解説委員に聞きます。
吉井)福島第一原発の事故後、何故今旧ソビエトのベラルーシが注目されているのですか。
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石川)ベラルーシはチェルノブイリ後、飛来した放射能が雨によって土地に沈着して広大な土地が汚染されました。その状況は今回の事故後の原発から北西方向、そして福島県の中通り、さらには関東など各地に点在するホットスポットの状況と似ています。放射性のセシウムが主要な汚染源であるという点も似ています。
ベラルーシではもっとも汚染の酷い土地からは移住させました。しかし汚染地帯には多くの住民が住み、農業などそこでとれる作物を利用しています。
住民の健康を守るため厳格な食物の放射性物質の検査などを行っています。
汚染状況が似ていること、もう一つは住民の健康を守るためにベラルーシが取っている対策が日本の今後の指標となるからです。
私はベラルーシで子供の健康調査や食物の放射性物質の検査を続けている研究所の所長に話を聞きました。
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ベルラッド研究所アレクセイ・ネステレンコ所長
「日本ではソビエトと同じように情報の隠蔽が行われている印象があります。重要なのは、まず食料を厳重に検査し管理することです。次に住民、特に子供たちの体内にどのくらい放射性物質が取り込まれたのか、検査を続けることです。そして住民に食物から放射性物質を除去する方法など放射性物質の影響を少なくする情報を教えることです」
吉井)どのような研究所なのですか。
石川)ミンスクにあるベルラット研究所です。
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1990年に父親のワシーリ・ネステレンコ博士が放射能汚染から住民の健康を守るために設立した民間の研究所です。99年にこの研究所の活動を取材したことがあります。この研究所の活動の柱は住民、特に子供の健康調査です。その映像をご覧ください。
NHKスペシャル「ロシア小さき人々の記録」
これは子供たちがどの程度、放射能を体内に取り込んでいるか調べるために博士が開発した測定機です。椅子の形をしているのでどこにでも持ち運ぶことができます。
(ワシーリ・ネステレンコ博士、子供検診の様子)
「よい子だね、さあ話をしましょう」
この子は兄弟とともに異常に高い数値を示していました。
貧しい家庭の子供たちでした。
(ワシーリー・ネステレンコ博士、両親と話す)
「子供さんの汚染度がひどいんです。ご両親とお話しようと思いましてね」
「座って話しましょう。手を打たないと危険です」
「いいですか。牛乳の汚染度はとても高い。お宅の牛乳は大変危険です。子供たちに飲ませないように」
吉井)食べているものでこんな影響が出るのですか。
石川)この子の場合は汚染された飼料で育てた乳牛のミルクを飲んだことが、セシウムを体内に取り込んだ原因でした。子供を定期検診することで放射性物質を取り込んだ原因が分かり、対処が可能となります。
日本でも汚染された飼料を食べた牛から基準を大幅に超える放射性セシウムが検出されました。体内被曝を防ぐためにも食物の検査が重要です。
ベラルーシは日本と比較しても、国も広範な検査を実施しています。
しかしネステレンコ所長は国だけでなく民間の研究所や食品会社や市民自身が並行して食料の中の放射性物質を検査することが重要だと指摘しています。
「国家機関は場合によっては都合の悪い情報は隠すものです。従って国の機関の検査結果に対しては住民の不信が高まります。こうした不信を取り除くためにも民間が独自に検査することは重要です。私たちは学校に検査機器をおいて実施していますが、そうしますと教育的な効果もあります。子供たちが放射性物質を詳しく知ることになるのです」。
吉井)日本も食品については暫定基準を定めていますよね、ベラルーシの基準はどのようなものですか。
石川)まず日本の基準です。
日本は食品については放射性物質の基準が無かったために暫定的な基準を三月に急遽定めました。今現在は問題となるのは半減期の長い放射性セシウムです。ほとんどの食品で1キログラムあたり500ベクレル、飲用水と牛乳やミルクなど乳製品は200ベクレルとされています。
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しかしネステレンコ所長は基準が甘すぎると批判しています。
「日本の基準はベラルーシに比べてあまりに緩すぎて、酷いと言っても良いくらいです。
ベラルーシではたとえば3歳児までの子供用の牛乳など食物の許容限度は放射性セシウムで37ベクレルです」
日本が飲料水と乳製品については200ベクレルとしていますが、その他は一律に500ベクレルという大雑把な基準となっていますが、ベラルーシでは、食品の種類ごとに細かく基準が定められています。表をご覧ください。
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3歳児までの乳幼児用の食品は1キログラムあたり37ベクレル、飲料水は10ベクレル、牛乳は100ベクレル、パンは40ベクレル、牛肉は500ベクレル、豚肉、鶏肉は200ベクレルなど食品ごとに基準値が細かく定められ、全般的に日本よりもかなり厳しめになっています。
吉井)でも日本よりも甘いものもありますね。
石川)そうです。たとえば乾燥キノコやお茶は日本よりも甘くなっています。お茶の葉にはこれだけのセシウムがあってもお茶自体にはセシウムはすべて溶け出しませんし、また乾燥キノコなども国民が食べる量は限られている、その代り、水や主食のパン、牛乳、ジャガイモなどは大変厳しい値になっています。国民の食生活の実態に合わせて細かく基準を定めているのです。
吉井)なぜ日本とベラルーシの基準値がこんなに違うのですか。
石川)ベラルーシの基準値の考え方は、内部被爆・外部被爆併せて1ミリシーベルトを超えないという基本方針からそれぞれの食品の基準が定められています。一方日本の場合も平常時は1ミリシーベルトが基準でしたが、福島第一原発の事故を受けて、現在は事故後の緊急状況であるとして暫定基準を定めるときに5ミリシーベルトまでは許容しようと食品に対する考え方を緩めたわけです。しかも5ミリシーベルトの中には放射性セシウムとストロンチウムによる被ばくのみです。ヨウ素などは別枠です。
5ミリシーベルトと1ミリシーベルトという基本方針の違いが基準値の差となって現れています。
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ただ厚生労働省では、もしも暫定基準値の値の食物を食べ続けた場合に5ミリシーベルトになるという値であり、実際の内部被ばくの値ははるかに小さくなり、健康には影響は無いとしています。また現在は事故後の緊急時であり、あまり厳しい値を定めることは被災地の農業や水産業を破壊することになりかねず、安全と経済のバランスを取ることが必要だとしています。
いずれにしてもあくまで緊急時であり、平時の1ミリシーベルトに戻さなければならないでしょうし、日本の食生活に合わせたさらに細かな基準づくりというものが必要になってくるでしょう。
吉井) ベラルーシでは厳しい基準の他に放射能汚染から住民特に子供を守るためにどのような措置を取っているのでしょうか
石川) まずセシウムを食物から除去する具体的な方策を住民に教えています。料理方法によってセシウムを食物から簡単に除去できるといいます。ネステレンコ所長によりますと魚と肉については、塩と酢入りの水に2時間くらいつけておいて、その水を流し、肉や魚を洗い、もう一度同じ措置を繰り返します。このようにして最低で放射性核種は30~40%出て行きます。肉や魚を煮る場合は、最初の煮汁は流して、二番目の煮汁を利用するようにとのことです。
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またセシウムはカリウムと似ているためセシウムの吸収を防ぐためにはカリウムを十分摂取していることが必要だとしています。
例えば子供にはカカオを飲ませます。カリウムがたくさん含まれているからです。バナナもたくさんのカリウムを含んでいます。それからジャガイモですとオーブンで焼いた皮つきのジャガイモにもたくさんのカリウムが含まれています。
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それからセシウムが体に入ったとしてもセシウムを体外に排出する方法も研究しています。
吉井)どんな方法ですか。
石川)果物などの細胞に含まれる植物繊維の一種ペクチンがセシウムの除去に効果があることがこの研究所の調査で分かっています。野菜や果物、一般に含まれていますが特にリンゴにたくさん含まれています。ただそのまま食べるのではなくフレッシュジュースにすれば良いと助言しています。リンゴだけでなく、他の果物そして野菜もおろしてフレッシュジュースにすればペクチンがたくさん含まれ、セシウムの除去に有効だということです。
研究所ではリンゴのペクチンを大量に含んだ錠剤も開発し、学校などで子供たちが服用しているということです。
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吉井)ベラルーシではいろんな努力をして、放射性セシウムなど放射性物質から子供たちを守ろうとしているのですね。日本でもこうしたことは可能でしょうか。
石川)食生活で言えばベラルーシと日本は異なるわけですから、日本に合わせた基準を作れば良い、主食のコメなどは厳しくするとか、日本に合わせた基準が必要でしょう。
また食品の検査についても今は一品、一品時間をかけて検査する方法ですが、日本の高度な技術を使えば、流れ作業のような形で検査するシステムが開発可能だという提言も出ています。
東大アイソトープセンター長 児玉龍彦教授
「流れ作業的に沢山やれるようにしてその中で、はねるものをどんどんイメージで、画像上でこれが高いと出たらはねていくような仕組みを、これは既存の技術ですぐできますものです。そういうものを全力を上げてやっていただきたいと思っております」
日本の高度な技術を食品管理に活かすということです。
ベラルーシは国家予算の二割がチェルノブイリ事故の対策に費やされています。
ベラルーシに比べますと日本は国家予算で100倍という大国です。
ベラルーシの国家予算の二割というのは1200億円ほどで日本の国家予算にすれば0.1パーセントほどの額です。後は国民の健康と安全を守るという政治的意思が日本政府にあるかどうかということだと思うのです。
ベラルーシなどで何が起きて、どのような対策が取られたのか、日本の今後を考える上でも、今度は我々がベラルーシなどから学ばなければなりません。

2011年9月9日金曜日


:植物工場

アルミ加工技術を生かし植物工場を低コストに 新産業としての植物工場(1)

(1/3ページ)
2010/6/11 9:00

図1 元気村内にあるアルミスの植物工場  多段式の棚に並んで栽培されているレタス。
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図1 元気村内にあるアルミスの植物工場  多段式の棚に並んで栽培されているレタス。
外界とは隔離された空間で、光や温度、栄養分を制御しながら農作物を育てる「植物工場」。ここ数年、国による補助金などの支援が盛んだったこともあり、農業とは無縁だった異業種から植物工場の建設や野菜の生産・販売事業に参入する企業が相次いでいる。
植物工場には、天候に左右されずに安定的に野菜などを生産でき、生産に広い土地を必要とせず、例えば都心のビルの中や工場の空きスペースなどにも設置できるという特徴がある。環境を最適に制御することで、作物に含まれる栄養価を高めることも可能だ。
こうした植物工場の盛り上がりを見て、工場向けの照明機器やセンサ、制御機器などを手掛ける生産設備メーカーも活発に動き始めている。現在、国内だけでも既に50カ所以上の植物工場が稼働しているといわれており、国はその数を3年で3倍にすることを目標として掲げている。また、植物工場設備の海外輸出も始まった。
ただし、現状では課題もまだ多い。中でも大きな課題が、植物工場を建設する際の初期投資額の高さである。償却費の負担が重くのしかかって採算がとれず、撤退に追い込まれたという事例もある。そこで本連載の第1回である今回は、植物工場の低コスト化に向けた動きを追うことにした。安価な植物工場システムを開発した、アルミス(佐賀県鳥栖市)の例を見てみよう。
廃校の木造校舎を利用
佐賀市郊外の山中、廃校になった木造小学校の一角に、レタスやバジルなどが青々と茂った水耕栽培の棚が並ぶ教室がある(図1)。アルミスが開発した、植物工場システムの実証実験場だ。それは、同社が運営する、廃校を再利用した農産物の直売所「元気村」の一角にあり、直売所で売るレタスを栽培しているほか、さまざまな野菜を実験的に育てている。
同社は売上高20億円強、従業員数40人ほどの中堅企業だ。主力事業は3つある。アルミニウム(Al)合金の押出し型材などの製造販売を行う「アルミ事業」と、Al合金を使った農業用の部材などを手掛ける「農業資材事業」、ホテルや宴会場用の備品を製造販売する「ホテル事業」である。
そこに今回、新たに加わったのが、植物工場ビジネスを手掛ける「アグリ事業」である。上記の廃校内に構築したような水耕栽培施設をベースに、栽培室、育苗室、出荷室、照明、空調といった一連の設備を備えた植物工場システム「野菜のKIMOCHI」を開発した。本格的な販売はこれからだが、初年度(2010年度)に5億~6億円を売り上げたいとしている。
図2 標準的なシステム構成の「野菜のKIMOCHI-120」  上下6段の棚20台で、3840株の栽培が可能。照明や空調を含めて、システムコストは1400万円程度となる。
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図2 標準的なシステム構成の「野菜のKIMOCHI-120」  上下6段の棚20台で、3840株の栽培が可能。照明や空調を含めて、システムコストは1400万円程度となる。
もうかる植物工場を造る
アルミスの植物工場システムの最大の特徴は、導入コストが低いことである。一般に植物工場は、内部をクリーンルーム化した上で、コンピュータによる自動制御など高度な管理システムを備えるものが多い。ただし、それには相応の設備が必要で、初期投資がかさむ。必然的に作物の栽培コストを押し上げ、採算をとるのが難しくなる。企業や農家が導入に二の足を踏む大きな理由は、この高コスト構造にある。
だが、野菜のKIMOCHIは、6段×20台の栽培棚を収めた栽培室と育苗室、出荷室に照明や空調、液肥管理装置などを加えた標準的なシステム「野菜のKIMOCHI-120」で、約1400万円(運搬、据え付け費用は別)である(図2)。数千万~数億円というのが植物工場の相場であることを考えると、かなり安い。
これなら、初期投資は比較的短期間で回収できる。試算してみよう。KIMOCHI-120でレタスを育てた場合、最大3840株の栽培が可能で、1カ月に2回収穫できる。実際に商品になる割合(商品率)を85%とすると、1日当たり220株弱を収穫できる計算だ。同社の計算では、電気代や人件費などのランニングコストは1株当たりおよそ53円であり、これに40円程度の利益を乗せて販売すれば、理想的には6~7年で初期投資を償却できる計算となる。もっと大きなシステムなら、さらに短期での回収も可能だろう。
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