低エネルギー社会を目指し


効果的な化石燃料エネルギー消費量の削減策を考えてみましょう

狙いは化石燃料の消費削減と自然環境の保全(=1次産業の活性化)です(H22.7.15一部改訂)

 地球環境は明らかに悪化が進み、その原因の一つは人類による膨大な化石燃料の消費にあると考えられています。豊かさの追求も地球環境が人類の生存を許容してくれる範囲内の話ですから、その解決策は、とにかく化石燃料資源の消費量を削減することです。確かに省エネルギー活動は盛んですが、なかには省エネルギーは口実で製品の差別化による大量販売を狙うものも多く見られます。さらにエネルギー消費を必要とする新しい便利な商品の開発は後を絶たず、エネルギーの消費量は、まだまだ増加を続けそうです。
 一方、今後予想される異常気象の増加など地球全体の変化を緩和するために必要な化石燃料消費量の削減に対する国際協力は、各国の思惑が絡み、簡単に実現するとは思えません。したがって、最近の集中豪雨災害や酷暑被害などの例のように、ある程度の異常気象による自然災害を覚悟する必要があります。とくに、われわれの生活圏で発生する自然災害による被害を出来るだけ小さく抑えることは、国の問題として対応することが大切です。
  これらのことから21世紀にわれわれが進むべき方向は次の通りです。
  • 異常気象の原因の一つとして考えられる化石燃料消費の削減
       経済成長を犠牲にしてでも、世界規模での化石燃料消費削減を進める必要があります。
  • 自国の自然災害を緩和する自然環境を実現するための地域の活性化
       自然環境の保全のためには一次産業の活性化を伴うものが望まれます。
 この方向に沿って考えうるエネルギーの削減策について考えて見ます。

(1)まずは、間接エネルギーの削減から始める

 ”豊かさ”がエネルギー消費量と関係していることは前に述べたとおりです。しかし、21世紀のわれわれが直面している課題(トリレンマ)を解決するには、豊かさに対する考え方を変えることが必要と考えられます。新しい豊かさの定義の中でエネルギー消費の大幅な削減が実現できればよいのですが、まだその道筋すら見えてきていません。むしろ、成長、成長という掛け声にかき消されてしまっているようです。
 とにもかくにも、現在われわれが享受している豊かな生活は、多くの“もの(あるいはエネルギー)”を利用して実現されています。たとえば、テレビで演劇を楽しむには(ア)テレビを購入し、(イ)電気エネルギーを供給して電波を受信することが必要です。われわれがテレビを見るために消費するエネルギーの総量はテレビを製造するエネルギーと見るためのエネルギー(さらに言えば、使用後廃棄するためのエネルギーなど)を加えたものだと考えることができます。テレビを見るエネルギー(電気エネルギー)はわれわれが豊かな生活を実感するために必要な直接エネルギーです。しかし、テレビ自体は、樹脂・電子部品などの材料の加工、組立などの過程(エネルギーを消費する)を経て製造され、電車やトラックなどで輸送されて手元に届きます。テレビを作り、輸送するために投入されるエネルギーは間接エネルギーです。 この間接エネルギーは豊かな生活を享受するときには、あまり意識されませんが、”もの(テレビ)”を手に入れる際には欠かせないエネルギーです。 これらある製品の製造、輸送、使用、廃棄のすべての段階で使用されるエネルギーの総和がライフサイクルエネルギーとよばれ、エネルギー消費量の議論はこのレベルで進めるべきです。
ライフサイクルエネルギー
図は「家庭生活のライフサイクルエネルギー」資源協会(平成9年)を基に、代表的な生活項目に対して、家庭生活における直接エネルギーと間接エネルギーの割合を示したものですが、全体として半分は間接エネルギーといえます。
 われわれがエネルギーを削減するといえば、まず我慢するなどの努力することを考えます。これは直接エネルギーの削減に相当します。しかし、間接エネルギーの削減は”我慢”には関係がないだけでなく、われわれが得る豊かさは同じです。この意味で、まず、不必要な間接エネルギーの削減から考えるべきです。
ここで第8次国民生活審議会 総合政策部会報告に示されているモデル世帯の消費エネルギーデータなどを参考に、家庭生活におけるエネルギー消費量を検討してみます。
ライフサイクルエネルギー
図は長年にわたって利用する製品(耐久品)の製造エネルギーを示しています。棒グラフ脇に書いた数値は製品の平均使用年数です。エネルギー削減は1年当たりのエネルギー消費量を対象にして計算するので、使用年数の長さが関係します。一般に、耐用年数が長いものは使用年数も長く、1年当たりのエネルギー消費量が少なくなりますが、流行などに支配される製品や進化が早くバージョンアップの多い製品では1年当たりのエネルギー消費量が多くなります。逆に、使用年数を延ばすことができれば、1年当たりのエネルギー消費量が少なくなり、エネルギー削減につながります。このことは、リフォームなどの修理をうまく利用できれば、効果的なエネルギー削減できることを示唆しています。

長寿命化で耐久品の間接エネルギー削減を進める

 図は家庭生活で間接エネルギーに相当する耐久品の製造エネルギーを平均使用年数で1年当たりに換算したものと、直接エネルギーに含まれる消耗品等の製造エネルギーと各種エネルギー資源の使用量を加えて1年間に消費するエネルギー量を示しています。
ライフサイクルエネルギー
 耐久品のうち製造エネルギーの年間消費量が多いものに着目すると、使用年数が30年と長い建物(木造1戸建82.5m2)の年間消費量は2.47Gcal/年で、自動車、衣類・寝具、ピアノ、カメラ等の趣味・娯楽用品などもほぼ同じ値になっています。 すなわち、これら耐久品の年間エネルギー消費量の削減は製造エネルギーの削減だけでなく長寿命化による削減が有効であることがわかります。
 一般に、使用年数は耐用年数と同じではなく、機能の進歩や流行などの要因に左右されるものもあります。乗用車はせいぜい10年、走行10万km位で廃車になると考えられていますが、新製品ではなく、中古車のリユース、リフォームやレトロフィット(改造)で使用年数を延ばすことができれば、消費エネルギーだけでなく資源消費量の削減が可能になります。

リフォーム・リユースで間接エネルギーを削減する

ライフサイクルエネルギー3
 たとえば、衣料・寝具は平均使用年数が4年と短く、建物などと並んで年間エネルギー消費量の多い製品です。
その理由として、レーヨン、ナイロン等の化学繊維は素材を繊維に仕上げるまでに多くのエネルギーを消費し、他方、木綿、羊毛等の天然繊維は繊維に仕上げるためのエネルギー消費は少ないのですが、輸送にエネルギーが使われていることが挙げられています。
 衣類は、多くが間接エネルギーで直接エネルギーの消費は少ないため、エネルギー消費の削減は、リフォーム・リユースによって大事に長く使うことが、簡単でかつ有効な方法と考えられます。たとえば、クールビズなどの宣伝に乗って新しく買うのは感心しません。

直接エネルギーの削減効果だけで買い替えるのは要注意です

 直接エネルギーに関連した消耗品類や各種エネルギー源については、とくに食料品とガソリン、電気、ガスの年間消費量が突出しています。多くの新製品は、直接エネルギー消費が少ないことを謳っていますが、買い換えるかどうかはライフサイクルエネルギーの観点から判断すべきです。
 (a)自動車
 ライフサイクルにおける全エネルギー消費量に対して直接エネルギー消費の削減の効果を考えるために、新しく買い換えたことによる製品の製造エネルギーの増加分を直接エネルギー消費の削減分によって回収することを考えます。自動車を例に第8次国民生活審議会 総合政策部会報告に示されているモデル世帯の消費エネルギーデータを参考にすると 耐用年数10年としたときの総エネルギーは
   自動車の製造エネルギー等、間接エネルギーが 20.27x106kcal
 耐用年数を10年とすると1年当たりのエネルギー消費量は2.027x106kcal/年
   自動車運転に伴う燃料の直接エネルギーは年間    77.4x106kcal/年 
(走行距離7650km、燃費8.5km/L、燃料900Lとし、1Lを8.6x103kcalと仮定)
   ここで、仮に燃費が10%向上した省エネ車に買い換えると、
    燃費は9.35km/Lとなるので毎年の燃料消費量は7650km/9.35km/L=818.2L すなわち、年81.8Lのガソリンが節約できます。これは年703.5x103kcal/年に相当します。  もし、古い車を廃棄した場合、新しく購入した車の製造エネルギーは変わらないとして、これを節約ガソリン量で回収するには20.27x106kcal/703.5x103kcal/年=28.8年が必要です。これは想定した使用年数を大きく超えているので、この考え方では「回収できない」ということになります。実際には、このほか廃棄に要するエネルギーの回収も必要です。もし、燃費改善が50%なら回収は約8年ということになり、結局、大幅な効率向上がなければ、”買い替え”はエネルギー消費削減にはなり難いといえます。  なお、古い車は中古車として利用されるから問題ないという意見もありますが、この場合、古い車の利用者が1人増えることになるので、むしろ、全体としてはエネルギー消費の増加になる危険性が大いにあります。
 この計算が示唆することは、新しい車に買い換えるより古い車を燃費の良い高効率の車に改造(レトロフィット/リフォーム)ができれば、非常に大きな効果があがるということです。もちろん、このためには法規制の整備が必要になる?と思われますが・・・   なお、エネルギー消費量の削減は年間エネルギー消費量を減らすことと同義ですから、製品の長寿命化も大きな削減につながります。現在の車は良く管理・整備されていれば30万kmの走行に耐えるといわれていますが、ほとんどが走行距離、数万~10数万kmで廃車になっているようです。この意味でも、リユースだけでなく、リフォームやレトロフィットは効果的です。
 (b)テレビ
 21型のテレビを想定すると投入エネルギーは原油換算で38L=346.8x103kcal、消費エネルギーは87Wx7.3h/dx365d=232kWh/年=499x103kcal・年(モデル世帯例1kWh=2150kcalで換算) 省エネ化によってエネルギー消費が30%削減できるとすると、147.9x103kcal/年ですから、投入エネルギー分を回収するには 346.8x103/147.9x103=2.3年で済みます。製造エネルギーの少ない家電製品は、また、効率向上率も高いものが多く、一般には買い替えが有利と考えられますが、家電製品の場合でも、古い製品を修理・改造して省エネルギー型にできるようになれば、エネルギー消費量はさらに減らせます。

食料は地産地消、旬産旬消を基本にする

 
ライフサイクルエネルギー4
 われわれ人間は食料からエネルギーを得て活動しています。モデルデータでは1人1日当たり、2483kcal(食品熱量)を食物から摂取しています。一方、この食料を生産するにはエネルギーが必要ですが、図に示すように食料生産に投入されるエネルギーはいろいろです。
 肉類は、飼料として多量の穀物を使用する割には1kgあたりの摂取できる食品熱量は穀物などとほぼ同じであるため、エネルギー投入量/食品熱量(エネルギー)比が高い値になっています。また、最近は、”季節に関係なく”きゅうり”、”とまと”、”みかん”などがハウス栽培されたり“ぶり”のように養殖されたものが増えています。また、飼育や栽培に特徴を持たせたブランド食品が増えていますが、これらは摂取できるエネルギー(食品熱量)よりはるかに多いエネルギーを投入して生産されていることを理解しておくべきです。
 このことからエネルギー削減のためには、まず、地産地消、とくに旬産旬消の農産物、養殖でない水産物、ブランド化してない肉類を食生活の基本とすることで多くのエネルギー消費を削減できます。もちろん、人間が活動のための活力を得るためのささやかな贅沢まで否定しているわけではなく、生活の基本部分についての話です。
ライフサイクルエネルギー5
 また、一般に食材は最終的には調理されて食卓にのぼります。代表的な料理で使われるエネルギーを産地、時期別に比較したものが次の図です。 図から肉類以外の野菜や穀物類のみの料理は比較的、生産エネルギーが低く、4人分でトータル1000~2000kcal程度になっています。また、トータルが少ない分、季節の影響が大きく見られます。生産地についても近県以外の場合、とくに輸入品では輸送エネルギーの全体に占める割合が大きくなる傾向が見られます。これに対して肉類は先に述べたように肉の生産エネルギーが大きく、料理全体の中で大きな割合を占めていますが、近県ものと輸入ものによる輸送エネルギーの影響の差も明らかに見られます。

輸送エネルギーの削減は地産地消にもつながる

 間接エネルギーのうち輸送エネルギーはいろいろな分野で問題になっています。食料についてはフードマイレージの考え方が普及して来ました。
ライフサイクルエネルギー6
これは「食料 (=food)の重量× 輸送距離 (=mileage) 」で、たとえばトン・キロメートル)であらわします。とくに、食料自給率のきわめて低いわが国は、図からわかるように、輸入量はもちろん、その輸送距離も他国と比べてきわめて大きく、輸送に消費されるエネルギーは大きく、当然、環境を汚染する炭酸ガスなどの排出量も無視できません。わが国と同様に食料自給率が低く、下がり続けている韓国と比べても大きな違いがあります。これに対して、アメリカ、イギリス、フランスなどは食料輸入量はかなり大きいのに、平均輸送距離がはるかに短いという特徴があります。いま、日本の場合、6000万tの食料を平均1万5000km輸送するとして仮に代表的な食品(米、小麦、さんま、ぶり、肉類など)の食品熱量を2500kcal/kg、代表的な輸送手段である船と鉄道の輸送エネルギーが500kJ/ton-km(~0.120kcal/kg)と考えると、輸入した食品の熱量は6x1010kgx2500kcal/kg=1.5x1014kcal、一方、輸入に要する輸送エネルギーは 6x1010kgx15000kmx0.120kcal/kg=1.08x10kcal14kcalとなり、ほぼ同じになります。
ウッドマイレージ
 同じような考え方にウッドマイレージがあります。これは現在、国内で使用されている木材の多くが輸入に頼っており、食料の場合と同じく、大きな輸送エネルギーを費やしていることを問題にしたものです。
 図では、国産材を使用する場合、木材1m3当たり原油36リットルの消費で済むものが、欧州材を使用するときには輸送だけに1m3当たり 220リットル(生産エネルギーの約6倍)を消費していることを示しています。比較的輸送エネルギーの少ないロシア材でも国産の約2倍のエネルギーを消費して供給されています。しかし、現実には、価格が高いというだけでエネルギー消費量の少ない国産材は使われず、林業は衰退の一途をたどり、自然環境は失われ続けています。
また、日本全体のエネルギー消費について見た場合、2004年度では産業部門でのエネルギー消費が約 45%で最も多く、続いて民生エネルギー消費が約 31%、輸送エネルギー消費は約 24%で全体の約 1/4を占めています。
日本の部門別エネルギー消費
さらに、図から判るように最近の 1973年から 2000年のエネルギー消費量の伸びは、GDPにほぼ比例する形で増加を続けており、とくに、産業部門が 1.1倍なのに対して、民生部門 2.2倍、輸送部門 2.1倍と大きくなっているのが特徴です。この伸び方は生活環境の変化を考えればうなずけるものです。なお、運輸エネルギー消費量のうち、貨物輸送は 43%、旅客輸送が残る 47%で、およそ半々となっています。この輸送エネルギーをゼロにすることはもちろんできませんが、地産地消によって貨物輸送を減らす方向に貢献できると思われます。
なお、この輸送エネルギーは、当然ながら、輸送手段によって大きく変わります。
輸送手段の差
図では輸送手段別に重量×輸送距離当たりに消費するエネルギー量が示されていますが、海運や鉄道貨物が約 500kJ/ton-km程度と比較的小さい値を示すのに対して貨物自動車はその 8~9倍、航空機は約 45倍を必要としています。このことから輸送手段の選択によって大きなエネルギー削減が可能です。たとえば、長距離の輸送は時間が許せば、鉄道や船舶で行うのが有利ですが、高速道路がタダになると貨物自動車による輸送が主となってしまいます。将来的にもこれでよいのでしょうか?
いずれにせよ、グローバル化を目指す今の世界では、市場の拡大に伴う各国間の輸送量は必然的に増加し、エネルギー消費量削減に逆行していることは意識しておく必要があります。このような状況になる一因は、まだまだ輸送コストが安すぎるためと思われます。むしろ、景気回復と称して、高速道路の通行料を安くしたり、その金で新しい道路を作ったりするより、集めた特別会計の資金を環境対策に回すべきと考えられます。

(2)リサイクルよりもリフォーム/レトロフィットに重点をおくほうが効果的

Recycle-Car
 自動車生産、世界一を誇るわが国では、年に 750万台の新車を生産し、毎年 500万台(1日約1万4000台)が廃車になっています。また、最近はリサイクル(Recycle)が地球に優しいなどの理由をつけて強引にリサイクルするケースが見られるようになりました。中古廃車からある程度の部品を取ると、後はスクラップにして、溶解し、元の金属などにもどす方法が一般的なようです。しかし、スクラップ後の処理に大きなエネルギーが使われていることはあまり意識されていません。 もちろん、うまく選別収集された素材のリサイクルでは、新しく素材を作るより大幅にエネルギー消費量を減らすことができる場合も多いことは知られていますが、なんでもリサイクルするのは得策ではありません。また、まだまだ分別して利用できるものが多いことも気になります。車の例で考えるとスクラップ処理する前のシャーシなどは事故車を除いて多くの場合、まだ使えます。ボディも若干の板金手直しで使えるものがかなりあります。鉄に戻して作り直すよりエネルギー消費量は少なくなると思われるのですがどうでしょうか? この他、中古廃車には(事故車を除いて?)修理する気さえあればリサイクルしなくても使えるものが多数残っています。 しかし、昨今の「新しい車を作って売る」という戦略には修理(Repair)して使うという考えはないようです。修理も部品を新品に取り替えるだけのものが多くなり、新車を買ったほうが得という風潮になっています。 最近の経済対策も新車を売ることに重点が置かれていますが、中古車を燃費のよい車に改造するという可能性に向けて中小企業を含む対策に進むべきと思われますがどうでしょうか?
 この状況は、シロモノ家電品など多くの耐久消費財に当てはまります。クーラーや冷蔵庫もエネルギー効率のよい最新型が次々と市場に現れますが、外枠やフィルターなどの部品まで新しいものに買い換える必要はあるのでしょうか?
中古品を修理して再利用すれば、素材にリサイクルして再利用する場合より大幅なエネルギー削減ができるだけでなく、資源消費量の削減にもなります。
 しかし、残念なことに修理というと現状復帰のイメージがついて回るため、消費者(利用者)の受けは良くないようです。もし、中古品をレトロフィット(retrofit改造)して新型なみの魅力的な機能を持たせることができれば、大きな効果が期待できます。
これは家のリフォーム(Reform)、リフレッシュ(Refresh)などと同じ考え方です。修理によって最新式に生まれ変わるなら製造に必要とされるエネルギーを大幅に低減できるはずです。また、このような修理・改造は、小回りが利いて本当に技術力のある企業でしか実行できませんが、むしろあまり大きくない中小企業が得意とする技術ではないでしょうか? 地場産業の出番と思われます。

(3)可能な限り地域固有の代替エネルギーに転換する

New-Energy
 代替エネルギーは石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料に代わるエネルギーで、図に示された再生可能エネルギー、従来型エネルギーの新しい利用法、さらには表にはありませんが、地下鉄廃熱や河川水熱エネルギーなどを利用する未利用エネルギー、原子力エネルギーなどが含まれます。再生可能エネルギーの最大の問題は一般にエネルギーコストが高いために技術はあるのに普及が遅れていることです。これはエネルギーの特殊性によるものです。原子力は本来、化石燃料エネルギーの一種ですが、温暖化などによる地球環境への影響が小さいと考えられることからアメリカやドイツで最近、見直しが始まっています。原子力は自前のエネルギーの性格をもち、経済性があると考えられています(異論もありますが・・)。わが国の場合、すでに電力の1/3を原子力で供給しているという実績があるため、今後、供給量を増やすことが容易にできる点などが注目されています。 しかし、原子力を推進するためには、さらなる情報公開とパブリックアクセプタンス(国民の受容)が不可欠で、国の慎重な計画ならびに地元の理解と協力に基づいた開発が望まれます。
再生可能エネルギーについて、わが国の潜在量は図のように推定されていますが、わが国の一次エネルギー供給量が原油換算で約60,000万klであることを考えると実際の潜在量は供給量の10~20%にとどまり決して多いとはいえません。ただ、この潜在量には再生可能エネルギーの中で最も利用されている中小水力や地熱エネルギーが除かれているほか、バイオマスエネルギーや風力エネルギーは控えめな数値になっていることに注意が必要です。
Renewable-Energy in Japan
この再生可能エネルギーについては、現在も多くのプロジェクトが国や民間の主導で進められています。しかし、わが国の場合、開発の中心は太陽電池、燃料電池、核融合など技術的に高度に見えるものが好まれる傾向にあるように思われます。 このため、風車ですら国産は例が少なく、ほとんどが外国製品です。バイオマスやバイオフューエルなどもあまり真剣に(大々的に)取り上げられてこなかったように思われます(最近はローカルに話題となってきましたが・・・)。しかし、自前のエネルギーをできるだけ早い時期に(地球環境が壊滅的な変化をする前に)手に入れるには、むしろ、風力、小水力、廃棄物、バイオマス、バイオフューエルや未利用エネルギーなど地域に潜在するエネルギーの開発を急ぐべきです。
 しかし、バイオフューエルが良いからといって食料用の農地を減らして、さとうきび、とうもろこし、大麦、大豆などの耕作面積を増やせばよいということにはなりません。
また、代替エネルギーの利用法についても人間側から見て効率的なものだけを追求するのではなく、エネルギーの特性に合った利用法を考えることも大切です。 たとえば、家庭の太陽電池出力は現在のように高価なインバータを使って商用電源につなぐだけではなく、自家用として電気自動車のバッテリの充電や洗濯機の電源に利用する方が有利です。また、ごみの高温焼却やダイオキシンの無害化処理も、天気の良い日に太陽熱を利用する(バッチ式の)方法なども検討に値します。
このほか貴重なエネルギー源として忘れてならないのは人力エネルギーです。

(4)人力エネルギーも活用する

 豊かさを実現するために、昔は多数の奴隷を使いました。奴隷は近隣国との戦いの戦利品として獲得していました。 この時代には人力は大きなエネルギー源でした。今は人間を奴隷として酷使することはありませんが、人の意志に基づく労働は認められています。NPO、NGOやボランティアのような活動はむしろ広がっています。
 人力は効率中心の機械文明の中で、これまで過小評価されてきましたが、1日 2000kcalあれば、かなりの肉体、頭脳労働をこなすことができます。さらに、人間は何もしなくても1日 2000kcalを消費しますが、労働しても何倍もカロリーを消費するわけではありません(肉体活動では若干増加しますが)。このように考えると人力ほど有用で、環境にも良いエネルギー源はないと思われます。
ただ、太陽や風力などの再生可能エネルギーと同じで人力エネルギーは連続して使えるエネルギー源ではありません。たとえば、太陽エネルギーは夜間使えないとか、風のない日には風力を使えないのと同じで人間は1日の約1/3は休まないと疲れて機能が低下します。 このため、再生可能エネルギーと同様に人力エネルギーは効率最優先の社会では使われなくなってしまいました。しかし、予測結果が示すように地球環境を守るには21世紀は、どのようなエネルギーもそれぞれの特性をうまく利用して可能な限り活用し、とにかく化石燃料の消費を減らす努力が必要です。
 最近、ホームレスやワーキング・プアと呼ばれる人達が増え、また、マンガ喫茶難民なども出現しているといわれます。これらの人達の多くは働くのが嫌なのではなく、何らかの理由で世の中からはじき出されたのですが、生活に苦労しています。一方、街や山でよく見かける元気なリタイア世代の中には、できれば何か世の中に役に立つ活動をしたいと考えている人達が多いようです。しかし、組織化されていないため、どうして良いか判らないというのが現状のようです。地域行政が取り組めば、多くの人に生活力と生きがいを与え、化石燃料エネルギー消費を削減できるのではないでしょうか。
 人力が優れている作業の例は、最近、大都市で行なわれている駐車違反の取締りをはじめリサイクル工程での分別、道路の整備・清掃、文化財の修復など臨機応変を必要とされる作業など広範囲にわたります。また、一部で話題となっている地方議会議員のボランティア化や元気なうちにボランティアとして介護活動に参加してポイントを貯め、介護されるようになったらこのポイントを利用する介護貯金システムなども優れた人力利用の例といえます。費用の問題も地域通貨などの利用を考えることによってある程度克服できるように思われます。
 これらの例のように、効率優先で機械化してきた仕事をもう一度見直してみてはどうでしょうか?
見方を変えたエネルギー消費削減策には上述のように食生活の地産地消、輸送エネルギーの削減、地域固有のエネルギー開発などがあり、いずれも地域に密着しています。人力エネルギーの活用も地域エネルギーの一つということができます。このように地域中心の行動は経済活動も地域中心で構築することになります。
 これに対して、グローバリゼーションや市場主義経済は地球環境を守りながら世界中の人々が等しく豊かに暮らせる地球を作るというのが建前と思われますが、現実は大きく異なり徹底的な合理化の上にたって資金力や技術力を駆使して他を駆逐し利益をあげることに集中しているように思われます。
本当のグローバリゼーションとは多量の輸送エネルギーで支えられている今の方式ではなく、人の交流を通して技術を発展途上国に伝え、その国に適したエネルギーと方法を用いて自然環境を守りながら、その国が必要とする範囲の豊かな社会を作り上げることのように思われますがいかがですか?
このような社会を前提にすると、さらに、いろいろな見方ができます。

(5)情報技術の徹底利用(疑問もあります??)

 21世紀は情報の世紀であるといわれます。自動車・自転車に乗りながらや横断歩道を渡りながらメールを打つような携帯中毒は論外ですが、情報化のメリットを全く利用していない分野も多いのが現状と思われます。例えば、今でも大多数のサラリーマンは毎朝、通勤地獄の中を出社していますが、本当に出社しないといけない人はどれぐらいいるのでしょうか?情報化時代ではもっと在宅勤務が増えても良いと思われますが殆ど普及していません。また、社内外の会議への出張も相変わらず多く、新幹線、航空機は連日満席です。 一方、テレビ会議は一向に利用されているようには見えません。これらを改良するだけでも交通機関で消費されるエネルギーを大幅に低減できそうなのですが? 案外、情報化が進まない理由の一つは人間の本性に関わることなのかも知れません。人間の脳はすばらしい能力を示す一方で、かなりいいかげんで怠惰なところを持っています。われわれが苦労しながらも毎日通勤するのは出社すればとにかく給料をもらう権利が得られるからで、わざわざ出張して会議をするのも、必要な結論を出せなくても努力した痕跡が残り、安心できるからではないでしょうか?(サラリーマンの皆さんに非難されそうですが)?とにかく、友達とのメールやゲーム、音楽、映像など自分が縛られない範囲だけ情報化が進み、社会のための情報活用は意外に遅れているように思えるのですが?
 このほか情報の問題には、情報量が多すぎてどの情報が正しいのか判り難く、逆に必要な情報が公開されていなかったり、発見が困難であったりします。 情報が多すぎることは言論の自由から避けられないことなので、一つ一つ自分で確かめる必要があり、各人がしっかりした考えを持って情報を選択することが望まれます。そのためには、できるだけ少ない判定ルールを持つことが肝要です(このホームページが”化石燃料エネルギーの削減”に注目して判断しているように・・・)。また、情報不足の例としてはフードマイレージや旬産旬消のデータおよび食品安全の情報など消費者にとって欲しい情報やエネルギー削減に対するヨーロッパの動向などはあまり伝えられていないように思われます。 一方、最近の携帯電話の機能やipadの出現など本当に必要だろうか?というものも次々と開発され、情報化社会?が進むにつれてエネルギー消費はまだまだ増えそうな気配が心配の種です。

(6)しかも、実行にはいくつかの課題があります

 (1)~(5)の対策を確実に実行すれば大きな効果をあげることができます。 しかし、情報技術の項目でも述べたように、人間は元来、いいかげんな面があり、徹底的にあるいは強制されて何かをし続けることが難しい生き物のようです。 人間は、もともと無駄の中で生きているようなもので、何もかもが禁止になると気力を失い、かえって対応策への行動が弱められるように思われます。 とくに、娯楽などの類いは、人間にとって貴重な息抜きになっており、むしろ、明日の活力を得ていると考えられます。 たとえば大勢の人がゴルフやドライブや海外旅行を楽しんでいますがエネルギー削減が話題になると、いずれもエネルギーを大量に使うか、自然を犠牲にして成立しているので禁止すべきだいう意見が必ず出てきます。 この議論を進めると人間がしていることの殆どが禁止の対象になってしまいます。
 このような視点から、以前は各人が自分のために過ごしているときはともかく、せめて社会との接点(本業)で活動するときには、より厳密にエネルギー問題に対処することを薦めていました。
 しかし、社会との接点で行動するとき、その所属する組織は多くの場合、まだグローバルな自由競争社会の中で生き残りをかけて活動しているため、エネルギー問題解決との両立は決して容易ではないようです。
 とは言え、地球環境が破壊されてしまえば、即座に人類の生活も壊れてしまいます。 このためグローバル化した市場主義や金融資本主義の社会に何らかの規制が加えられれば良いのですが、その動きは見られません。 今回の欧州・金融危機でも、ドイツ、フランスから”おかね”の移動に対する課税が提案されていたようですが、イギリスの反対もあり、その後は報道がなくなりましたが、どうなったのでしょうか? 対策としてはグローバル化した市場主義の自由競争社会の外で活動する地域あるいは組織・企業を増やしてゆくことが考えられそうです。 しかし、人間社会自体が自然に変わることを期待できない以上、個人的には持続的な社会を目指して
  • 異常気象を減少させるため化石燃料消費の削減に最大限の努力をする。
      化石燃料の消費量増加につながる経済活動はできるだけ避ける。
  • 自国における自然災害を緩和するため一次産業を含め地域の活性化と自然環境の保全を進める。
      
ことを念頭において行動することを期待したいものです。
 ところで、化石燃料エネルギーの削減が地球環境保全のために不可欠であるとして、その結果、われわれは、どのような経済社会に住むことになるのでしょうか?

 主な参考資料
1)「家庭生活のライフサイクルエネルギー」,(社)資源協会(平成9年)
2)津田淑江,瀬戸美江:「CO2排出削減をめざした食生活の提案とその食育実践に関するプロジェクト研究」,地域に根ざした食育推進協議会/社団法人 農山漁村文化協会 , 2006食育実証研究発表会(2006)
3)内山洋司:「私たちのエネルギー」,培風館(1998)
4)武田邦彦:「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」,洋泉社(2007)
5)大嶋茂男:「リサイクル社会-消費からの脱出-」,新日本新書(1993)
6)藤原 良:「環境問題の杞憂」,新潮社(2007)

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