世界の子ども達

インドで150人の子どもたちが自らの権利を主張
投稿日時: 2006-02-02 16:34:00 (1181 ヒット)
2006111日~13日まで、インド、ラジャスタン州ジャイプールのバル・アシュラム(児童労働者のためのリハビリ施設)で、第3回「ラシュトリヤ・バル・ミトラ・マハパンチャヤット(全国子ども村議会代表会議)」が開かれた。

会議では、150人の子どもたちが、児童労働を終わらせるとともに、平等な機会および教育を受ける権利の保護を要求した。この会議には、ラジャスタン、マディヤ・プラデシュ、ビハール、ウッタル・プラデシュの4つの州の50村から代表の子どもたちが集まった。集まった子どもたちは、主に元児童労働者の子どもたちで、それぞれ出身の村の選挙で選ばれた子ども村議会(Bal Panchayat)の代表たちである。

この会議は、インドで25年間、児童労働の取り組みを行ってきたNGOBBAが、地方から国家レベルまでの政策立案および意思決定過程への子どもの参加を推進するために設けたものである。また期間中子どもたちは、自らの経験や実績や課題について話し合い共有するとともに、村の開発問題やおとなの村議会と提携して問題を解決する方法について議論した。会議では、選挙監視委員の監視の下、子ども村議会の国レベルの役員選挙が実施され、議長には、プリヤンカというラジャスタン州の13歳の少女が選出された

BBA
の代表カイラシュ・サティヤルティ氏は、「選ばれた子どもたちひとりひとりは、それぞれの村に変革がもたらされたことを示すもので、彼らは責任をもって変革を起こそうとしている」と述べた。また、児童労働と非識字がこの国における貧困の根源であることを説明し、政府計画の協議事項に子どもの課題が組み込まれていないことが社会経済の成長と開発のペースが遅い原因となっているとも述べた

会議には、ラジャスタン州の農村開発大臣兼州議会議長のカルラル・グイジャー氏、元ラジャスタン州知事のアンシュマン・シン裁判官、ユニセフのラジャスタン州代表サティシュ・クマール博士らが招かれ、祝辞を述べた。また、ギルダリラル・バルガヴァ氏(ジャイプール)とラヴィ・プラカシュ・ヴァルマ氏(ラキンプール・キリ)のふたりの議員と、シニアジャーナリストのアジャイ・セティヤ氏が選挙を監視した。

マハパンチャヤットのリーダーであるアマール・ラルは、政府の政策や計画において子どもが優先事項として考慮されていないことは残念だとしながらも、救出された児童労働者が連帯することで、子どもの教育や開発の問題が政策決定の中心課題となるだろうと述べた

マハパンチャヤットの役員は、おとなたちに伝えたいことを議論し宣言文としてまとめた。宣言文は子どもたちの共通のニーズを反映しており、全ての子どもが自らの権利を得、児童労働をなくし、すべての少年少女が無償で意義のある義務教育を平等に受けられることを実現するための明確な指針となる。

ジャイプール宣言
 児童労働は完全に廃絶されるべきである。子どもを労働に従事させる事業者や政府役人に対しては、強力な法的措置がとられるべきである。

 すべての子どもは、政府によって、無償の意義ある質の高い義務教育を提供されるべきである。

 二重の教育制度は廃止されるべきである。豊かな子どもも貧しい子どもも同じ教育を受けるべきである。

 「子どもにやさしい村」は、全国に作られるべきである。これは児童労働のないモデル村である。すべての子ども、特に女の子は学校に行く。そこでは、バル・  パンチャヤットといわれる子ども村議会の議員が選挙によって選ばれる。

 幼児婚は廃絶されるべきである。

 学校には基本的な設備が完備されているべきである。黒板、安全な飲み水、座るためのマット、テーブル、椅子、女子用トイレ、運動場、スポーツ用具は、学校  で優先的に用意されているべきである。

 学校の教師が給料を期限通りに受け取れるようにしなくてはならず、彼らは教職以外の仕事に従事するべきではない。

 すべての小学校にいち早く教師が任命されるべきである。特に女性教員が優先されるべきである。

「情報への権利」は、子どもが政策決定の過程に参加する時、また子どもたちが政府が自らの公約を責任を持って実行するよう要求する時に行使されるべきである。

子どもたちは、自分の親が政府の様々な福祉事業によって恩恵を受けられるよう、これら福祉事業について知らされるべきである。

2006120日デリー)



 世界の児童労働ミニ講座


児童労働とは・・・Child Labour と Child Work

「児童労働Child Labour」とは、子どもの成長にとって害のある労働を指します。
子どもの労働すべてを指すわけではありません。
国際条約にしたがった定義としては、15歳未満(途上国は14歳未満、つまり義務教育を受けるべき年齢の子ども)の労働と、18歳未満の危険有害労働をさします。
ACEでは、以下の定義を用いて、児童労働(Child Labour)と子どもの仕事(Child Work)を区別して考えています。

*注:ここでは、「子ども」を「国連子どもの権利条約」にしたがい18歳未満の子どものことを指します。


世界で一番親切!?児童労働の数の解説~2010年発表最新統計~

国際労働機関(ILO)は「グローバルレポート」を発表し、4年に一度、世界の児童労働者数の推計を発表しています。20105月に発表されたグローバルレポート “Accelerating action against child labour” (邦題「反児童労働行動の加速化」)を基に最新情報を解説します。 20105月に国際労働機関(ILO)より発表された最新の児童労働者数は、21500万人(5-17歳)です。これは、世界の子どもの7人に1人にあたります。前回(2006年)は21800万人と児童労働者数が発表されていましたが、ILOは少なく見積りすぎたとして、今回の発表で2004年時点の児童労働者数を22200万人に訂正しています。
表1を見ると、世界の子ども人口は158620万人へ増加していますが、児童労働者数は2000年から少しづつ減ってきています。2004年と2008年の推計を比較すると、児童労働者の数は22200万人から約700万人減少し、-3.2%となりました。しかし、2000-2004年の変化率は-9.5%を記録しており、減少のペースが落ちています。

表1:5-17歳の子どもの人口と労働人口の数位(単位:100万人)

2000
2004
(増減率)
2008
(増減率)
子どもの人口
1531.4
1566.3
2.3%)
1586.2
1.3%)
就労児童
351.9
317.4
-8.3%)
305.6
-5.3%)
児童労働
245.5
217.7
-9.5%)
215.2
-3.2%)
危険労働
170.5
126.3
-24.7%)
115.3
-10.2%)
出典:ILO(2010) "Accelerating action against child labour" を元に作成


児童労働の世界分布~働く子どもの割合がもっとも高いのはアフリカ~



グラフ1の5-17歳の児童労働者の地域分布を見ると、アジア・太平洋地域が児童労働者全体の53%を占め、児童労働者の数が最も多くなっています。次に多いのがサハラ以南アフリカ(サハラ砂漠より南に位置するアフリカ諸国)で、全体の30%を占めています。 一方、その地域の子どもの数に対する児童労働者の割合が最も高いのはサハラ以南アフリカです。4人に1人の子どもが児童労働に就いています。





世界の児童労働-産業別統計-~約6割が農業分野~

児童労働を産業別に見ると、農業分野が最も多く、全体の6割を占めます。2004年からの変化を見ると、農業が69%から60%に、工業が9%から7%に減少し、サービス業の割合が22%から26%に増加しました。セクター別の男女比を見ると、農業と工業ではそれぞれ62.8%、68.5%と男子が共に多数を占める一方、サービス業は、52.6%と女子が男子を上回っていることが特徴です。

ACEでは、20105月にILOから発表された児童労働の最新統計情報をまとめた、ワーキングペーパーを発行しました。より詳しい世界の児童労働の傾向を表やグラフを交えてお伝えしています。ACEオンラインショップより、お買い求めください。No.3では最新情報を、No.1では2006年のグローバルレポートの発表内容を紹介しています。



児童労働を禁止する国際条約~日本はすべての条約に批准~

児童労働は、国際条約で禁止されているだけではなく、実は途上国政府のほとんどが児童労働を禁止する法律を持っています。国際労働機関(ILO)は、国際的な労働に関する条約をこれまでに作ってきました。1973年に最低年齢条約が出来たときは、この条約を批准(ひじゅん:守ると約束すること)する国は多くありませんでした。
しかし、1999年に最悪の形態の児童労働条約が新しく出来て、児童労働についての世界的な世論が高まったことで、138号条約も批准する国が増えました。
特に最悪の形態の児童労働条約は、ILO総会で満場一致で可決され、ILO史上最も早いスピードで批准国が増えた歴史的な条約になりました。日本は以下の三つの条約すべてを批准・締結しています。
最低年齢条約(ILO138号、1973年)


1.     働いてよいのは義務教育を終えてから(一般的に15歳。途上国は14歳でも可)
2.   軽易な労働は13歳(途上国は12歳でも可)
3.   健康・安全・道徳を損なうおそれのある労働は18

200911月現在、ILO加盟国183カ国中、154カ国が批准


最悪の形態の児童労働条約(ILO182号、1999年)

「最悪の形態」とは以下のものを指します。

1.     強制労働、債務労働、農奴、紛争での子ども兵士(強制的な徴兵)、人身売買
2.   買春、ポルノ
3.   麻薬の売買などの犯罪行為
4.   その他危険な労働(虐待にさらされる労働、炭坑内、水中、危険な高所や閉所での労働、危険な機械を使用する労働、化学物質や高温、騒音にさらされる労働、長時間労働、夜間労働、不当に拘束される労働など)

200911月現在、ILO加盟国183カ国中、171カ国が批准


子どもの権利条約(国連、1989年)

子どもの権利条約は、子どもの権利を語る上で最も基本的な条約です。
「子ども」とは18歳未満のすべてのものさします。
この条約は、子どもの生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利を明文化し、子どもたちが生まれながらにして権利を持っていることを認めています。この中で、教育を受ける権利、経済的搾取から守られる権利なども明記されています。


児童労働基礎情報(総合の学習の時間や調べ学習などにぜひお使いください)




投稿日時: 2011-04-01 17:40:30 (1286 ヒット)
北京(2011215日)アップル社が発表したレポートによると、
2010
年に同社の製造工場で児童労働に従事していた子どもの数は91名に上り、
さらに137名の従業員がノルマルヘキサン中毒の健康被害にあっていた。

アップル社の製造業者に関する年次報告書によると、前年度の約9倍となる
91
名以上の児童が仕入先で働いていたことを認めた。
同社は、年齢偽証の懸念から、年齢チェックを強化している。
レポートは、労働時間等の労働条件の順守状況が悪化していることも
示しており、同社の指針に順守している施設は監査した施設の1/3以下に
過ぎないと述べている。

またアップル社は、商品を製造する中国蘇州の会社で、137名の従業員が
ノルマヘキサン炭化水素中毒にあっていることを初めて認めた。
同社が問題を認めたことを評価する声がある一方、同社が未だ事実を全て
公表していないことに対する批判もある。

アップル社では、昨年同社の主要調達先である大手電子機器会社
フォックスコンで自殺者が複数出たことから、
より厳しく監視されることになった。
同社は、フォックスコンの死亡事故に関して困惑していると共に
非常に遺憾であると述べている。
アップル社の最高執行責任者であるティム・クックは、他の幹部と共に
施設視察のために深川へ向かい、独立した第三者に状況調査を委託した。

先月、アップル社は2010年度の第4四半期の収益を
過去最高の60億ドルと発表した。

出所:guardian.co.uk
URL:
 http://www.guardian.co.uk/technology/2011/feb/15/apple-report-reveals-child-labour

投稿日時: 2011-03-09 14:25:03 (811 ヒット)
デリー-(201121日) インドで子どもたちが行方不明となって
いることが、日々報道され、政府の大きな懸念事項となっている。
首都デリーでは、今年11日から23日の間、行方不明になった子どもは
117
人(その内約半分は女の子)。平均すると毎日少なくとも5人の子どもが、
首都から消えていることになる。

長い間この問題に取り組んできたBBA(Bachpan Bachao Andolan
ACE
のパートナー団体)の創設者のカイラシュ氏は、127日、
行方不明の子どもを持つ親約50人と共に、その訴えを伝えるため、
デリーの警察本部長と面会した。親たちは、警察など関連当局の対応の
あり方について苦情を話し、子どもたちを取り戻せるよう申し立てた。 

BBA
と親からの要求は、「警察は、行方不明の子どもの問題を、
非組織的な犯罪の観点として、優先的に取り上げること」、
「行方不明の子どもの事件は、速やかに登録し、児童の保護および
犯罪者の追訴と処罰のために早急に捜査すること」など5つである。

親たちの意見を聞いた後、警察本部長は、警察内では、女性や子ども
の問題について配慮が足りないことが問題となっていると認めた。
そして今後はこれを改善して迅速に対応することを保証するとともに
BBA
に協力を求めた。

また親たちが起こしたデモの結果、中央政府はこの問題への関心を
示した。女性及び子ども開発大臣は、行方不明の子どもを警護する
ため、全国の州が、中央政府と合意書を交わし、ソフトウェアの
活用による行方不明の子どもの情報交換を行うことを約束したと発表した。

出所:BBAプレスリリース
URL:
 http://www.bba.org.in/news/020211.php

投稿日時: 2010-12-09 21:36:29 (1148 ヒット)
デリー-(20101117日) 米国労働省は、今年720日、強制労働あるいは児童労働によって生産・製造されている可能性がある製品リストを発表し、その中にインドの繊維・衣料製品が含まれた。

これを受けて、インドのアパレル産業は、最大の市場となる米国バイヤーが消極的な行動を起こさないよう、米国政府と協議を行った。

インドのアパレル輸出業者を代表する上部組織、アパレル輸出促進審議会は、これまで米国の関係局と3度協議し、現場レベルでの調査についての米国労働省による最終決定に対して、産業界での対応として従うこととした。また児童労働に関する助言と、国内産業での労働慣行に関する共通の法的順守指針について受け入れた。

この進展は、アパレル輸出業者が、クリスマスシーズンに向け特に欧米からの受注に備え、積極的な動きをとり始めた。インドから米国とEU諸国へのアパレル輸出は、全体の約8割を占め、200910年度の総計額は104億ドル。201046月の累積輸出額は、50.2億ドルとみられ、昨年と比べ7%落ち込んだ。

インドのアパレル産業では700万人の雇用をかかえ、その約半分が
輸出セクターである。

出所:The Hindu Business Line
URL:
 http://www.thehindubusinessline.com/2010/11/18/stories/2010111851620400.htm

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投稿日時: 2010-08-05 13:34:04 (1973 ヒット)
2010714日)タバコメーカーのフィリップモリス・インターナショナルは、カザフスタンのタバコ栽培農場で児童労働があったことが発見され、「深刻な問題」と認めた。

米国の人権団体ヒューマンライツ・ウォッチ(以下、HRW)による調査で、フィリップモリス社がタバコを調達しているカザフスタンの農場に10-17歳の児童労働者72人がいたことが報告された。

調査によれば、カザフスタンには移民労働者が30万~100万人いると推測され、多くはタバコ産業での仕事を求めてキルギスタンなどの近隣国からビザなしで入国している。中には、雇用主にパスポートを没収され、繁忙期の後わずかな賃金しか支払われない。雇用主に借金をしたために強制的に滞在させられる債務労働者もいる。78月には暑い天候の中、一日18時間働く。家族全員でやってきて、身体的に悪影響のある肉体労働をし、繁忙期が終わるまで89カ月間、賃金が支払われないことも多い。

タバコの収穫、乾燥などの作業は、農薬や肥料などに触れて皮膚病などを引き起こすため、健康に害を与える作業だ。特に子どもは被害を受けやすい。皮膚からニコチンを吸収して、吐き気、だるさ、めまいなどを引き起こす「グリーンタバコ病」という病気もあることが分かった。

スイスにあるフィリップモリス本社の声明では、HRWが問題に目を向かせ、第三者モニタリングや、訓練や国内監理の改善、農家と全ての労働者との文書による契約の必要性など、対策を約束させてくれたことに感謝している。

同社は、「タバコのサプライチェーンにおいて児童労働、強制労働、その他の労働者の搾取を予防するために取りくむことを約束する。」と述べている。

出所:guardian.co.ukPhilip Morris tobacco suppliers in Kazakhstan found to use child labour

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投稿日時: 2010-07-22 14:21:31 (2803 ヒット)
2010630日)バングラデシュの児童が危険で有害な労働に従事していることはたびたび問題となっているが、児童労働に従事している弱い立場に置かれている子どもたちを保護する解決策がない。しかし、現在は警鐘をならすべき段階にきている。

バングラデシュでは産業化が進み、正規および非正規産業部門で児童労働に従事している子どもたちが、この需要にあわせるかのように増加している。

この国では児童労働者数を把握するための調査はされてこなかったが、政府統計局は過去に20022003年にかけて「第1回全国児童労働調査(NCLS)」を行い、その結果、児童労働者数は490万人であることが明らかとなった。

その後、政府およびNGOもこの国の児童労働の状況を把握するいかなる調査も行っていないため、最新の統計がない。ある専門家によると「有害・危険な仕事に従事している児童は700万人にのぼる」と推定している。

これらの児童は、主に[1]都市部の工場、[2]運輸、[3]バッテリー・リサイクリング、[4]零細事業所、[5]製靴、[6]家事手伝いなどの仕事に従事している。

国際労働機関(ILO)・在バングラデシュ担当官は、「ILO2016年までに世界から最悪の形態の児童労働をなくすための計画がある」と述べているが、しかし、このILO目標を達成することは極めて困難と予測されている。

この問題の解決には総合的な対策とアプローチが重要であり、[1]政府、[2]事業関係者、[3]国際諸団体などの協力があって実現されるものである。しかし、「ILO182号条約」に盛り込まれている「最悪の形態の児童労働をなくす」には障害も多く、[1]信頼すべき統計がないこと、[2]中央や地方政府、事業関係者、NGOなどの協力、[3]有害な児童労働とは何かの政府による定義がないことなどが指摘されている。

政府は20103月に「全国児童労働政策」を発表しており、この政策が児童労働問題解決のさらなる前進となることを期待されているが、積年の根深いこの問題は政府が主導してあらゆる関係機関や組織、団体などの結集なしにはこの行動計画が無意味なものとなってしまうかもしれない。

出所:国際労働財団(JILAF)メールマガジンNo.39より一部抜粋

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投稿日時: 2010-06-30 10:55:15 (1032 ヒット)
デリー-2010612日)612日、児童労働反対世界デーの記念イベントが、インド国家子ども権利保護委員会(NCPCR)、ILO(国際労働機関)、UNICEF(国際連合児童基金)UNESCO(国際連合教育科学文化機関)の共催で行われた。

NCPCR
ILOの代表者から、世界およびインド国内での児童労働の現状や今後のより積極的な対策の必要性などについて、また企業団体や労働雇用省などのゲストから、それぞれの取りくみなどについて述べられた。

インドの児童労働反対世界デーの様子
 http://stopchildlabour.jp/2010/blog/item_58.html

また、同反対デー前の一週間、児童労働問題に取りくむNGOBBA(ACEのパートナー団体)と、地元政府および警察によって、各地域で強制・奴隷労働から子どもを救出する「児童労働に反対するインド・アクション・ウィーク」が行われた。

これにより、1週間で全国で約400人以上の子どもたちが救出され、30人以上の雇用者が逮捕された。うちデリー市内では100人以上の子どもたちが、刺繍、縫製、靴製造などの小規模工場から救出された。

各地元新聞では、中央政府、首都デリーではデリー政府の労働局から、児童労働について14歳未満の子どもの雇用禁止やその罰則などを啓発する広告が掲載された。

(報告:国際協力事業担当 成田)

投稿日時: 2010-06-03 19:25:29 (1111 ヒット)
ハーグ-2010511日) 51011日、ILO(国際労働機関)と協力してオランダ政府が主催し、ハーグで開かれた児童労働世界会議は、2016年までに最悪の形態の児童労働を撤廃するため、世界的な努力をさらに強化する行程表を承認して閉幕した。

行程表は、政府、労使の社会的パートナー、市民団体に対し、教育、社会的保護、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を拡充することを呼びかけている。

政府に対しては「関連する政策が与える影響を評価し、期限付きの予防措置を導入し、撤廃のために十分な資金を国際協力を含み措置すること」を、社会的パートナーに対しては「児童労働に取り組む方針や事業計画などを通じて、緊急事項として最悪の形態の児童労働を禁止、撤廃する実効性ある措置を即時に講じること」を求めている。

ILO
のカリ・タピオラ総局長は、「会議で話し合われた経験や考えは児童労働に対する私たちの意識、知識、約束を大いに向上させ、いつも通りのやり方では2016年までの撤廃目標は達成できないことを明らかにした」として、「行程表が手に入った今、やり遂げられるかどうかは私たち皆にかかっている」と語った。

会議に先立ってILOが発表した児童労働に関するグローバル・レポート『Accelerating action against child labour(反児童労働行動の加速化・英語)』に示されるように、前回グローバル・レポートが出された2006年に比べて児童労働の減少スピードは落ちてきている。

このような中で開かれた今回の会議には、80ヵ国450人以上の政府高官、労使代表、国際機関、学識者、市民社会の代表、元児童労働者が出席し、閉会式にはオランダのベアトリックス女王陛下も臨席した。

出所:ILO駐日事務所ウェブサイト
  

投稿日時: 2010-05-19 17:30:00 (936 ヒット)
東京(2010416日) マイクロソフト社(米国)は、ハードウエア製造を委託している中国工場での劣悪な労働環境を批判する調査報告を受け、415日に詳しい調査に乗り出すと発表した。独立した監査チームを同工場に派遣したという。

米国のNGONational Labor Committee(NLC)が413日に公開した報告書によると、台湾KYE Systemsが中国の広東省東莞市に所有する工場では、マイクロソフト社を含む複数の企業からマウス、スキャナー、キーボード、デジタルカメラなどの製造を請け負っており、未成年の工員が115時間働かされているという。

同工場は、1617歳の学生を数百人、最も多いときで1000人雇用し、主に朝745分から夜1055分まで1週間に67日間勤務させていた。時給は65セント(約60円)で、食費を差し引くと52セント(約49円)しか残らない。自由行動はいっさい禁じられ、決められた時間帯しか工場を出ることを許されていない。また、女子に対するセクシュアルハラスメントもあったという。

マイクロソフト社はこれまで、同工場を毎年訪問し、またKYE Systemsから労働状況の報告を受けていたが、過去2年間で児童労働などの問題は見られず、超過勤務は大幅に削減され、報酬は東莞市の基準にのっとっていたとしている。マイクロソフト社でエンターテインメントおよびデバイス事業製造業務担当コーポレート・バイス・プレジデントを務めるBrian Tobey氏は、「もし今回の調査で当社規定に準じていないことが判明した場合、しかるべき処置をとる」と述べた。

出所:日本経済新聞ウェブサイト

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投稿日時: 2010-04-28 14:00:00 (1041 ヒット)
東京(2010414日)ILOは、世界の児童労働の現状に関する新たな報告書グローバル・レポートを、来る51011日にハーグで開かれる児童労働世界大会に先立ち、5月に発表する。

同レポートはILO4年ごとに発表し、6月に開かれるILO総会に提出している。前回のレポートが総会で審議された2006年には、2016年を最悪の形態の児童労働撤廃目標年とすることが定められた。『Accelerating action against child labour(反児童労働行動の加速化)』と題する今年のグローバル・レポートは、世界の反児童労働キャンペーンで達成された進展状況を評価すると共にこの目標を達成するために残されている課題を示している。

児童労働世界大会は、オランダ社会問題・雇用省がILO児童労働撤廃国際計画(IPEC)との密接な協力の下、国連児童基金(ユニセフ)及び世界銀行の協力も得て、最悪の形態の児童労働撤廃に向けた取り組みの強化を図って開催する。

この会議の主な目的は、児童労働に関するILOの二つの条約(最低就業年齢に関する第138号条約と、最悪の形態の児童労働に関する第182号条約)の全加盟国による批准の達成に向けた世界的な運動を強化し、2016年の目標達成に向けた取り組みを前進させること。各国政府及び労使団体、非政府組織(NGO)などが最悪の形態の児童労働に
対する取りくみの中で学んだ教訓と好事例を共有し、2016年の目標達成に向けた具体的な手段を提示する「行程表」を検討することが期待されている。

グローバル・レポート(英仏西語)は58日(土)GMT午前01分(日本時間同日午前91分)に報道解禁されると共にILOのウェブサイト上にも掲載される。

出所:ILO駐日事務所

ハーグ児童労働世界大会には、児童労働撤廃に向けて日本で活動している
  「児童労働ネットワーク(CL-Net)」のメンバーも出席する予定です。

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投稿日時: 2010-04-19 13:45:47 (1100 ヒット)
ハイデラバード(201041日)614歳までの子どもの無償義務教育を基本的権利とし、これを義務化する法律が41日施行された。

州政府は、性別や社会的経済的階層を問わず、すべての子どもの教育の権利を保障する義務がある。14歳以下の全ての子どもの教育について規定した2002年第86回憲法改正から8年を経て、法律が施行された。

この法律は、学校教育の質や施設などの教育環境を一定レベルに保つため、教員と生徒の割合、訓練を受けた教員の配置、居住地周辺の小学校の設置、トイレや飲料施設の設置などについて守るべき基準を規定している。

また女子、指定カースト・部族や貧困層の子どもなど、これまで教育を受けることが困難だった子どもが継続的に就学できるよう保障する。また全ての私立学校では、貧困層出身の子どもの入学枠を25%設けなければならず、その費用を政府が補助する。

この法律の実行には5年間で約17100億ルピー(約34200億円)とみられている。シン首相は、この法律の実施について各州政府やその他の関係者に協力を呼びかけ、予算の制約によって法の執行が妨げられてはならないと述べた。また自身の子ども時代について「学校まで長い距離を歩いて通い、ランプの薄明かりで本を読んだ。今の自分があるのは教育のおかげだ。インドのすべての子どもに教育の光を届けたい」と語った。

国家子ども権利保護委員会(NCPCR)がこの法律の実施状況をモニターする。インド全体で未就学の子どもの数は約800900万人と推測される。シャンタ・シンハNCPCR議長は、「もし学校に通っていない、あるいは中途退学した子どもがいれば、州政府は法律を犯したことになる。この法律が成功するかどうかは、児童労働をなくすことができるかにかかっている。」という。

出所:201041-2日、Deccan Chronicle, Indian Express新聞記事より

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「債務奴隷 ネパールのスニータちゃん」
~2009年5月15日(金)テレビ大阪 「世界を変える100人の日本人」~

これは、2004年8月7日に関西テレビで放映した番組『世界がもし100人の村だったら』の ナレーターの部分をテープ起こししたものです。
画面がない分、内容を十分にお伝えできないかもしれませんが、少しでも心に伝わる ものがあれば幸いです。原作の『世界がもし100人の村だったら』について少し付記しておきます。
    オリジナルは、アメリカの環境学者が1990年に書いたエッセイです。原題は 『if the world were a village of 100 peaple』。それがインターネットのメールの “口コミ”で、内容を少しずつ変えながら世界に広まっていったものです。同名の書籍が日本で発刊されたのは2001年12月。口承文芸研究者の池田香代子さん が、2001年10月に知人から送られたメールで読み、丁度米同時テロ直後だったこと もあって、経済格差の記述に衝撃を受け、「物語に込められた希望のメッセージを 広く伝えたい」」と、出版関係者に話を持ち込みました。トントン拍子で話が進み 最終的に大阪の田村書店から出版されました。 副題はこう書いてあります。 『もしもたくさんのわたし・たちが  この村を愛することを知ったなら  まだ間にあいます。』     (参考:2002年2月23日 日本経済新聞記事)

『世界がもし100人の村だったら』
~債務奴隷 ネパールのスニータちゃん~
隷として生まれてきた子供たちがいます。  ネパールの茶畑で働くスニータちゃん、11歳。彼女は一日中働きづめです。  彼女を縛っているのは代々の借金。  生まれながらの貧困、借金地獄。遊ぶことも知らず朝から晩まで働き続  ける子供がいるのです。  そんな少女が暮らしているのは、ヒマラヤ山脈のふもとに広がるネパール  王国の南東部。ここには今でも生まれながらに奴隷生活を強いられる人が  大勢いるのです。  こも債務奴隷といわれる人がいる紅茶農園の一つ。  債務奴隷とは親やそのまた親の世代から代々受け継がれてきた借金を背負  い一生働き続ける人たちです。  農園主の家で身の回りの世話をするまだ幼い少女の姿がありました。  手を休めることなく働くスニータ、11歳。彼女に休むひまはありません。   農場主の妻「もっと力を入れてポンプを押しなさい、しっかりやるのよ!」  小さく細い体には大変な重労働です。  朝の6時から働いています。農園主の家の掃除に薪拾い。  特にきついのは寒い時期の洗濯です。足までつかりながら、肌を切るような  冷たい水で何度も何度もすすぐのです。  代々続いた借金は、返すあてのない額にふくらみ、一生働くことだけが  決められているのです。  (家から離れた川で洗濯しながら)   スニータ「ご主人たちの洗濯物よ。つらいけど、家族のために仕事をするの」  パール王国は債務奴隷制度を禁じていますが、今も数え切れないほど  債務奴隷が存在するのです。  この地方は紅茶の産地として有名で、ブランド紅茶として世界で愛用され  ています。その茶摘に債務者奴隷の子供たちが借り出されるのです。  ここだけで10人の子供たちがいました。   スニータ「ずっと働いているの。学校・・・行ったことないわ」  (うつむきながら答えてはにかむ)   スニータの母「あたしの言うことを聞いて。今日はこの畑を全部終わらせるわ。        さあ、行って、行って!急いで!さあ始めましょう、ここに一人、        真ん中に一人向こうに一人よ、散らばって!」  4月から10月までの茶摘のシーズンは朝夕3時間毎日続く作業です。新芽だけを  丁寧に取るためには、女や子供たちの小さな手のほうが向いているのです。  スニータは8歳のときから一人前の茶摘要員です。  手を休めることはできません。農園主が見ています。   農園主「新芽だけを上手に摘むんだ。上だけ摘んで、下の芽は取るんじゃ       ないぞ!」  女や子供たちは黙々と作業を続けます。  親の世代や、さらにその上の世代から積み重なった借金でがんじがらめの人たち。  生まれたときから雇い主のために働くことを宿命付けられた子供たちです。  作業が進めば背負った袋はかさばります。   スニータ「重たくなっちゃったよ、袋が重たすぎて溝に落ちちゃったわ        足元が見えないんだもの」  (畑の中で尻もちをつき、他の子供たちと一瞬笑い合う)  肩が痛くなるので時々かけ替えます。これはお母さんから教わった方法。  スニータのお母さん・ラトナマヤさんは42歳。お母さんも小さいときから  この農園で働き続けていました。さすが農場一の摘み手、スピードが違います。   スニータの母「私も8歳の時からこの仕事をやっていますよ、ずーっと昔からよ」   スニータ「仕事はつらくないわ、お母さんといっしょだから」  家族がそばにいることが唯一の励みです。休みなしで2時間働いて袋がいっぱいに  なりました。  (農場に戻って農場主の三男に袋を渡す。)   スニータ「採ってきました」   農場主三男「ずいぶん軽いじゃないか!ちゃんと仕事したか?」  検量係は農園主の息子です。子供たち5人が収穫した新芽は最高級の紅茶に  加工されます。  (重量を計りながら)   農場主三男「12キロか、やっぱり少ないな、次はもっと頑張るんだぞ」  務奴隷の一家に自由はありません。  家族全員が借金のために働きます。  男の仕事は力仕事や家畜の世話。スニータの父(カラン・バハドル 51歳)と  弟たちも一日中そんな仕事に追われていました。  7才のスシールに9歳のスーラジュ、この弟たちも学校には行っていません。  水牛の世話で一日が暮れるのです。   スニータの父「まったく楽じゃありません。暑い時も寒い時も仕事をしなくちゃ        ならないし、そうしないと食べていけないですから。        心配といえば子供の将来だね。自分はどんどん年老いていくし・・・」  債務奴隷の家族の多くは一生を生まれた農園で働いて終えることになるのです。  (藁葺きの小さな家が写る)  こがスニータの家族が住む家です。  5人で暮らしています。台所用の土間とベッドがある寝室の二間だけです。    スニータの母「狭いでしょう、恥ずかしいわ」  確かに狭い家ですがとても清潔にしています。スニータもお母さんもきれい好き  なのです。家自体は農園主からの借り物です。  ニータはいったん家に戻った後、再び農園主の家の仕事にかかります。  スニータの家は債務奴隷の中でも最も借金が多いため、他の子供たちより  余計に働いているのです。煮炊きの薪の準備、そして食事の下準備をするのも  夕方からの仕事です。  (川の水で食器を洗いながら)   スニータの母「借金があるの、代々のことだからどのくらいあるのさえ わからないくらい。子供たちを学校へ行かせてあげたいけど お金がないし・・・。だから勉強させてあげられないんです」  スニータは食事の支度にかかっていました。一時も手を休める暇はありません。  スニータのお母さんも、そのお母さんも、またそのお母さんも代々この家の  下働きを勤めてきました。  人達の食事は夜の8時ごろです。  このあたりでは昔から主人達が直接口にする料理を奴隷には触らせません。  スニータも下準備までです。一説には奴隷に毒を盛られることを心配しての  ことだといいます。この日は三男の嫁が作りました。  ネパールでは食事の順番が決まっています。まずは男性の家族が食べます。  妻や娘たち女性はじっと待っています。男性が食べ終えるとやっと女性達の番  が回ってきます。奥さん達が食べ始めたのは8時半を回っていました。  しかし、スニータは主人の家族全員が食べ終えるまで食事をするができません。  後片付けをしながらじっと待ちます。むしろ仕事をしているほうがお腹がすいて  いるのを忘れられます。   農園主三男の妻「余ったから持って帰っていいわよ」   スニータ「すみません・・・」  これでやっとスニータも夕食が食べられます。スニータは残り物のご飯をもらって  家へと急ぎます。家までは歩いて2分。スニータの家族は彼女が帰ってくるのを  いつも待っていてくれます。   スニータの母「さあ、私たちも食べましょう、お腹すいたでしょ」  スニータの分の食事は主人の家からもらってくるので一人前浮きます。  家族揃っての夕食。   スニータの母「さあ、食べましょ、食べましょ!」  夜の9時すぎ、スニータの家族はやっと夕食です。家族揃って食べるこのときが  スニータにとって一番幸せなときです。   スニータの母「ご飯食べたらまた戻るんでしょ?」   スニータ「うん、まだ仕事が残ってる」   スニータの母「終わったら早く帰っておいで」   スニータ「うん」  夕食を済ませたスニータは息つく暇もなくまた主人の家へ戻りました。最後の  後片付けにかかります。彼女の仕事が完全に終わるのは夜11時近くになります。  まさに働きづめの一日です。  夜11時、やっと長い一日が終わりました。家族5人が揃って同じ部屋で眠ります。   スニータの母「明日も早いから・・・」   スニータの父「あしたもやることがたくさんあるぞ」   スニータの母「ゆっくり寝ましょう」  片寄せあって眠るささやかな幸せのひととき。スニータは誰よりも早く深い眠り  に落ちてゆきました。  です。  5時過ぎには起き出し、そして6時には親子で茶畑に出ます。   スニータの母「新芽だけをちゃんと摘むんだよ」  また長い一日の始まりです。   スニータの母「身体はしんどくない?だいじょうぶ?頼むから病気にだけはならな        いでおくれ。一番怖いのは病気になること。また借金しなくちゃな        らないし、借金が増えるだけだから」  生まれたときから働き同士の母と娘。いくら働いても返済のめどの立たない借金に  縛られながらも、2人は仕事の中にささやかな喜びすら見出しているようでした。  摘は1週間摘んで、芽がなくなったら次の芽が生えるまで待ちます。  1週間摘んで1週間待つ、このローテーションです。  次の芽が生えるまでスニータは農園主の家族の世話をします。今回、農園主の  長男の家へ手伝いに行かされました。  ここが町にある長男の自宅。スニータにとってはお城のような家です。  この家に来るのは初めてでした。もちろんここの家族に会うのも初めてです。   農園主長男「ただいま、いい子にしてたかな」   農園主長男の妻「おかえりなさい」   農園主長男「スニータ、まずは紹介しておくよ、これが妻だ」  農園主の長男には、スニータより1歳下のプリティ(10歳)という娘がいました。  スニータの弟と同じ年頃の息子(ヴァルン 8歳)もいます。いい家族でスニー  タは安心したようです。  しかし・・・。   農園主長男の妻「ここのぞうきんを使って。濡らしてからあそこを拭いてちょ           うだい。鍋を洗ったら裏返してね。油が残らないようにしっ           かり洗ってよ!」  挨拶も早々に長男の妻は次々と仕事を言いつけました。ここでも手を休めている暇は  なさそうです。とことん家の手伝いをさせられそうです。   農園主長男の妻「床も拭いてちょうだい、雑巾を濡らしてよく絞るのよ。 全部綺麗にしてね。部屋はここだけじゃないんだから、 さっさと拭いて他の部屋もやるのよ。 でも手を抜いちゃだめ、丁寧にね!」  スニータが仕事をしている頃、この家の子供たちはコンピューターゲーム。  初めて見るのもがいっぱいの家です。おもちゃもたくさんあります。  片付けても片付けてもモノで溢れている家。  息子の物を片付けたら今度は娘の物です。スニータが一生自分のものにできそうも  ないものを無造作に散らかしてあります。初めて触った外国の人形。でもスニータの  気持ちはここにはないようです。  (バービー人形の髪を櫛でとかしながら)   スニータ「どうしてるかなって、家族のことを考えてたの。お父さんお母さん        元気かなって・・・。弟達は今何をしているんだろうって・・・。 早く家族に会いたいです。早く帰りたいけど怒られるかな・・・」  もう二度と触ることはないかもしれない人形です。   スニータ「かわいいね」  本当はこんな人形でもっと遊んでいたい年頃のはず。  この家の娘プリティは名門の私立小学校に通っています。成績はクラスでもトップ。  スニータは生まれて初めて英語を聞きました。  リティに将来の夢を聞いてみました。   プリティ「私の夢は世界中の困った人を助ける仕事につくことです。そして        彼らに新しい生活を与えてあげられたら素敵だと思うわ」  食の時間です。   プリティ「またこれ?!」  ここでは家族が全員一緒に食べます。親は子供たちのカレーを混ぜてあげ、  味の調整までする手の掛けよう。ここでもスニータだけは全員の食事が終わる  まで食べられません。お腹がすいたのをじっと我慢しながら働きます。   プリティ「スニータ、お水!」  仲のよい家族を見るのは今のスニータには余計つらいことかもしれません。  大好きな自分の家族のことを思い出すからです。スニータはどんなつらい仕事  も家族と一緒だから耐えられるのです。でも、今日から1週間スニータは住み  込みでこの家で働くのです。  は農園にいるときよりずっと早く仕事が終わりました。  この上の子供たちにとってもスニータは不思議な存在です。   プリティ「ネエ、教えて、ここと田舎とどっちが楽しい?」   スニータ「田舎の方がいい」   プリティ「まあ、どうして?町はとってもいいところよ」   スニータ「村のほうが空気も水もきれいだし緑もあるし、だから村が好きかな」   プリティ「それだけの理由?」   スニータ「そうね、お父さんとお母さんがいるから、だから私は田舎の方が        好きなの」  スニータも子供部屋で寝ることになったようです。但し床の上で。  スニータにとっては、どんな場所より家族といっしょに眠る自分の家の狭い  ベッドが一番なのです。子に家の子供たちがいろいろ話しかけてきましたが  スニータはすぐに寝てしまいました。家族の夢でも見ているのでしょうか。  です。  スニータは6時に起きて掃除や洗濯を済ませました。  この子供たちは学校です。学校へ行く準備をじっと見ているスニータ。  てきぱきと一通りの家事を終え何もすることがないのです。制服に着替えた  プリティをスニータがうらやましそうに見ていました。   農園主長男の妻「忘れ物はないわね」  プリティがスニータに手を振っています。スニータの顔は寂しそうでした。  世界中の子供たち誰もが必ず学校に行けるとは限らないのです。  スニータは、またもくもくと仕事を始めました。朝食の片付け、そして  子供たちが脱いでいった服の整理。細々とした仕事がまだ山のように残っています。  子供たちの机の上も何度も拭きました。   スニータ「私も・・・学校・・・行きたい・・・」  今日のスニータは農園で仕事をしているときよりずっとつらそうでした。  同じ年頃の子どもの生活を知ったことで、彼女の心の中に何か割り切れぬもの  が初めて生まれたのかもしれません。  ニータ、11歳。  生まれたときから先祖代々の借金にがんじがらめにされた少女。  彼女には自分の自由にできる時間がないのです。  思いっきり遊ぶことも知らず、学校へも行けず、物心ついたときには  すでに一日中雇い主のために働きとおす毎日でした。彼女にはそれが当り前の  ような日常になっています。  奴隷と言う制度が21世紀の今も存在するのです。  そんなスニータの夢は「大きな家に家族と一緒に住みたい」。  おわり 上に戻る